天敵

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天敵

風が吹く。 外に居れば、何処にでも風が吹く。 特に障害物のない此処なら、尚更だ。 俺、福井愛斗は屋上で空を眺めている。 しかし、それはあくまで建前に過ぎない。 実際は授業不参加。 理由は授業が嫌い。 それだけだ。 「お前はいいのかよ?」 「ん、何がだい?」 隣りで弁当を食べ始めたヤツがいた。 時刻は、十時過ぎ。 薄型レンズのおしゃれの眼鏡。 黒い短めの髪に、きっちりと校則を守った身だしなみ。 優男がぴったりな顔。 奴の名前は、神崎智樹。 サボりの優等生と言う矛盾の存在だ。 「授業はどうした?」 「マナがそれを言うの?面白いね。」 「別にウケを狙ったわけではないのだが…。」 「あ、このエビフライ美味しい。」 マイペースな奴だ。 って何かエビフライについて語り始めやがった。 「タルタルソースは、王道だね。でもソースにベッタリ突っ込むのは邪道だよね!」 「いや、俺は塩派だから関係ないな。」 素材の味を最大限に味わう。 俺はそんな男だ。 「ケチャップは許せるよ?でも、マヨネーズは許せない。あれでは、衣に纏われたエビに申し訳ないよ。」 「俺、塩にチョイ着け派だって。」 「そもそも。マヨラーってさ―」 俺の声なんぞ聞こえて居ないみたいだ。 元々、俺も智樹の話しを聞く気など皆無。 故に… 「お休み。」 寝る。 昼ではないが、昼寝と洒落込みます。 「緑の恐竜と、赤モジャってどっちが強いと思う!?」 金髪馬鹿が、屋上にログインしました。 訳の分からん事をほざきやがってます。 まだ、昼寝はできないようだ。 「僕は赤モジャ。」 真剣に答える智樹の目は、輝いている。 エビフライの話しは何処にいった? 「だよな!」 金髪も眼鏡同様。 てか、お前も赤モジャかい。 「「マナは!?」」 …フン。 「青い狸だ。」 屋上の空気が冷たくなった。
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