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険悪な空気が、保健室内に漂う。
「な、何よ。真田君には関係ないでしょ!」
少しばかり達也の勢いに、飲まれていた小林だったが、すぐに元通りの気の強さを見せた。
だが、今の達也には意味がないのだ。
「はは、聞こえなかったのかなぁ?」
一瞬だけ、笑顔を見た。
でも本当に一瞬。
「達也…。」
声に反応して俺を見る達也。
何故だろう?
俺には、彼が泣きそうに見えたのだ。
「…っ!」
達也は床に転がる缶を掴み、小林に力一杯投げつける。
缶が俺の右側をすり抜け、小林に向かおうとしていた。
―気づけば、右足を軸に反時計周りに半回転していた。
そして、左手を伸ばし、過ぎ去ろうとしている缶を、左手で受け止めた。
「…もう良いから、落ち着け。」
「でも、そいつ―」
「落ち度はお互いにある。」
「ふぁあ…何の騒ぎだ?」
寝ていた保険医が、目を覚ましやがった。
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