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「あっ蓮。今から呼びに行こうと思ったのに。」
母がエプロン姿でそう言った。
リビングからはカレーの良いニオイが漂って来る。
「今日はカレーかぁ。
中辛だよね?」
「もちろんよ。
ほら早く食べましょ。」
そう言って母が背中を押す。
リビングへ行くと父が2人を待っていた。
「おっ、やっと来たか。」
「待たせてゴメンなさい。
じゃあ食べましょうか。」
谷崎家では家族が揃って、夕飯を食べるのが日課だ。
ちなみに子供は蓮しかいない。
「そういえば、
香苗(蓮の従姉妹)の旦那さん、どっかの研究者らしいぞ。」
蓮には全くもって聞きたくない話だ。
自然と口を動かすのが早くなり、食事を早く終わらせようとする。
「あら、そーなの。
稼ぎは良いのかしらね~?」
「さぁな。
男は金より心の広さだ。
まぁ香苗が連れてきた男なら問題無いと思うがな。」
蓮はさきほどより早く口が動く。
「そうね。
そういえば、
蓮さっき叫んでたけど、何かあったの?」
(Niceおふくろ!)
「いや…、別に何でも無いよ。」
(でも、流石に悪い夢にうなされてたなんて言えないな…。)
蓮は心の中で苦笑いする。
「そう。なら良いんだけど。」
「あっそうだ。
親父、竹刀買いに行きたいんだけど…」
「おっ良いぞ。
じゃあ今週の日曜は無理だから、来週の日曜に行こう。」
今週の日曜には
結婚祝いに香苗達の新居に行く予定なのだ。
ちなみに結婚式は金曜である。
「ありがとう。
それと、ごちそうさまでしたー。」
そして蓮は風呂に入り、さっさと寝てしまった。
しかし蓮はまだ知らない…。
この父との約束を果たすことができないことを…。
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