~親戚となる男~

7/12
前へ
/54ページ
次へ
「あっ蓮。今から呼びに行こうと思ったのに。」 母がエプロン姿でそう言った。 リビングからはカレーの良いニオイが漂って来る。 「今日はカレーかぁ。 中辛だよね?」 「もちろんよ。 ほら早く食べましょ。」 そう言って母が背中を押す。 リビングへ行くと父が2人を待っていた。 「おっ、やっと来たか。」 「待たせてゴメンなさい。 じゃあ食べましょうか。」 谷崎家では家族が揃って、夕飯を食べるのが日課だ。 ちなみに子供は蓮しかいない。 「そういえば、 香苗(蓮の従姉妹)の旦那さん、どっかの研究者らしいぞ。」 蓮には全くもって聞きたくない話だ。 自然と口を動かすのが早くなり、食事を早く終わらせようとする。 「あら、そーなの。 稼ぎは良いのかしらね~?」 「さぁな。 男は金より心の広さだ。 まぁ香苗が連れてきた男なら問題無いと思うがな。」 蓮はさきほどより早く口が動く。 「そうね。 そういえば、 蓮さっき叫んでたけど、何かあったの?」 (Niceおふくろ!) 「いや…、別に何でも無いよ。」 (でも、流石に悪い夢にうなされてたなんて言えないな…。) 蓮は心の中で苦笑いする。 「そう。なら良いんだけど。」 「あっそうだ。 親父、竹刀買いに行きたいんだけど…」 「おっ良いぞ。 じゃあ今週の日曜は無理だから、来週の日曜に行こう。」 今週の日曜には 結婚祝いに香苗達の新居に行く予定なのだ。 ちなみに結婚式は金曜である。 「ありがとう。 それと、ごちそうさまでしたー。」 そして蓮は風呂に入り、さっさと寝てしまった。 しかし蓮はまだ知らない…。 この父との約束を果たすことができないことを…。
/54ページ

最初のコメントを投稿しよう!

83人が本棚に入れています
本棚に追加