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当時私は5歳だった。
「千春!どうしよう!!」
その日、朝食のフレンチトーストを頬張っていた私と、コーヒーを飲んでいたパパの前に、ママが慌てたようにやってきた。
「美里が…。あぁ、私が…。千春!!」
パニック??
オロオロとパパの前を行き来する姿は、いつものママとは違った。
「落ち着け。どうした?」
右往左往するママの腕を優しく包んだパパは、いつも通り。
ママと私にだけ向ける、優しい瞳。
他人の前では、パパの瞳は鋭かったりする。
でも、私やママの事になると途端に目尻が下がるのは、私達が特別だからだとパパは言ってた。
「美里がね。子供が生まれそうだって!」
深呼吸をしたママがそう言うと、パパは「そうか」と頷いた。
美里さんとはママのお友達で、昔ママが仕事をしていた時の同期らしい。
美里さんには、めぐちゃんっていう2歳の女の子とお腹の中に赤ちゃんがいて、1週間前 ママと遊びに行った時に「来月生まれるのよ」と言っていた。
「予定より2週間早くてね、旦那さん 今出張で、東北にいるんだって」
ママは自分のことのように、オロオロしているけれど、私にはその理由が分からなかった。
だから、クマちゃんの絵の描いたフレンチトーストを口に運びながら、ママとパパの様子を伺うしか出来なかった。
パパは、ママの手を握ってパパの膝の間に立たせた。
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