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「――あっ、おーい! 市川ぁー!」
「……っ!?」
階段を降りた途端、私を呼ぶ声。
それに驚いて辺りを見渡すと、職員室とは正反対にある生徒用の昇降口の方からこっちに向かって走ってくる人影。
電気が消されて薄暗くなった廊下に目を凝らすと、その人影は同じクラスの藤代くんだった。
誰か分かった途端、安心したと同時にめんどくさい奴に会ったという思いになる。
「ふ、藤代くん何の用かな? 私、これから帰る所なんだけど……」
今、私の顔は絶対引きつっていると思う。
何故なら――。
「市川、すまねぇけど今から借りた本返したいから図書室開けてくれ!」
これだ。
彼はその快活そうな見た目に反して読書が趣味らしく、よく図書室を利用する。
それは図書委員としてはとてもありがたい。ありがたいのだが、何故か昼休みも図書室は利用可能だというのに毎回部活終了後に来るのだ。
そう、図書室も利用終了となった時間に。
せっかく鍵を閉めても再び鍵を開けなくてはならない手間が掛かるので、そんな彼がちょっと煩わしかったりする。
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