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って、なにやってんだよ俺…。
バイトが終わり自転車を引きながらゆっくり歩く。
隣には暗い顔の彼女。
「ごめんね」
重たい空気をなんとかしようと口を開きかけたとき、彼女は言った。
「え、いや、そそそんな何で謝るんですかっ、俺の方こそ…その、…ごめんなさい」
「なにが?」
「なんか…知り合ってから何日も経ってないのにあんな…、生意気なこと」
不審がられなかった方が不思議だろうと今になって思う。
名前も知らないのに、数回しかあったことないのに、てか毎回数秒しか話してないのに。
「てか…俺完全に不審者…」
「嬉しかったよ?」
「…!」
びっくりして彼女を見ると、そこにはいつもの笑顔があった。
「声かけてくれて嬉しかった。ありがとうね」
「…なんで」
「ん?」
「なんで、待っててくれたんですか。なんだよこいつってなるでしょ普通…」
「信用できるかもって思ったからだよ」
「まだ何回も会ったことないのに?」
「うん」
「…」
「あ、あそこの門右ね」
彼女が少し先を指差す。
「すみません、どこに向かってるんですか?」
「私の家」
「……えぇ?!」
「大丈夫だよ変なことしないから」
あはははっと冗談っぽく笑う彼女。
緊張し始めてから数分、俺たちはきれいなマンションの下に着いた。
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