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3階の『乾』と書かれた部屋のドアが開かれると、狂くんの部屋よりもすこし広いそれがあった。
口をぽかんと開けて立っていると、おいで、というように手招きされる。
「適当に座ってて」
俺は返事をしてすとんと腰を下ろした。
あたりを見回すとやはり女性らしいというか、可愛いものがたくさんある。
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます…」
淹れてくれたお茶をすする。
「乾、さん」
「ん?あ…そっか、名前まだ教えてなかったか」
「はい」
「乾曜子だよ、よろしく」
「…瀬斗光黄です」
ペコッとお辞儀をすると微笑まれた。
「こんな時間に高校生連れ込んで…犯罪級だな」
「犯罪って…。話したいって言ったの俺ですし…」
「家帰らなくても大丈夫?」
「大丈夫です。いつも帰ってませんから」
「え…」
「独り暮らししてる兄のアパート行ってるんでほとんど実家に帰ってないんです、最近」
「へー。不良くんだ」
「なんですかそれ」
曜子さんはフッと笑うと、長い髪を耳にかけた。
「…なんで泣いてたんですか?」
単刀直入に聞いてみた。
なるべく優しく、そう言い聞かせながら言葉を発してみたけど曜子さんにはどう聞こえたんだろう。
黙る彼女をしばらく見つめていた。
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