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  「いらっしゃいませー」 去年から始めたコンビニのバイト。 慣れた手つきで品を袋に詰めて、レジ打ちをして、営業スマイル全開で客に接する。 実はこれかなり疲れるんだが。 ふと顔を上げれば時計の針は9時45分を差していた。 今日も来るのかな、あの人。 「ただいまー」 重たい体で玄関のドアを開けるとすぐ耳に入ってきたのは兄とその彼女さんの笑い声。 「あ、光くんおかえり」 「おつかれー」 俺の兄の狂くんこと狂平と、コナンさんこと虎南有香さん。 「夕飯まだでしょ?簡単なのだけど今から作ろうか?」 「あ。ありがとうございます」 コナンさんはニコッと笑ってキッチンへ向かう。 俺の営業スマイルなんかとはえらい違いだな。 俺は鞄を下ろしてレポートを書いてる狂くんの向かいにあぐらをかいた。 「大学の課題?」 「んー。まぁな」 「大変そうだね」 「そこそこな。つーか光黄、母さんに連絡入れたのか?」 「うん。大丈夫」 狂くんは微笑んでまたレポートに目を落とした。 「…俺いちゃ悪いかな?」 「なんで?」 「だってコナンさんいるし…泊まるんじゃないの?」 「なに言ってんだよ。いつもお構いなしにいるくせに…」 「だって狂くんやりたいこともやれな…っ」 手元にあった資料で頭を叩かれた。 「俺紳士なんで、そういう心配いらないから。我慢できるから」 顔を赤くする狂くんに、やっぱりこれからは少し気を遣おうと思った。  
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