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蹴飛
いよいよ放課後が来た。時が経つのは早いもんだ。
春菜とあいちゃんは相変わらず強がりながら後ずさりしつつ、わたしの後ろをついてくる。
こんなときは短い廊下も長い城への道のりくらいに感じる。
胸の鼓動が高鳴る。
かつ、かつ、かつ
三人ぶんの靴の音だけが廊下を反響する。
つん、と鼻をつく匂いがしてくる。
化学室の前を通り、廊下の奥から二番目の部屋が生徒会室だ。
何の敵が待ち構えているのかわからないが
今日は敵はひとり、と思われる。
他の役員は定期清掃に出かけていくのを確認済みで、
一人でいるのは彼女のみ。
今しかない、と息をのんで部屋のドアを叩く。ぱしんぱしんと擦りガラスが振動する。
返事はない。
留守なのだろうか?
きい……
「お邪魔しまーす……って汚っ?!」
「ごほごほぼへっ」
「あいちゃん大丈夫?!つーか汚っ」
三人はあっけにとられた華の生徒会室でもあろうところが
埃っぽいうえにお菓子のカスやペンキやピペットやコンバインが散乱しているのだから。
ちなみに農業学校です。
「FFJのあとだから片付けてないのかなあ……」とあいちゃん。
「しかし、去年(と思われる)の体育祭パネルの絵の具ぐらいは片付けるんでねえの?
」
すでにかぴかぴになったペンキの缶をのぞきながら春菜は言う。
「こっちは段ボールとかの比較的新しい山だよ」私は、指さして、山を踏もうとした、そのとき、ふにゅっと嫌な感触がしたので一瞬止まったら
「埋もれるーー!」と段ボールの山々がぼこっと立ち上がった。
「ひいっ」
「びびったああ」
「あれ、ドンキじゃなかったー!びっくりさせちゃってごめんね」
がさがさっ
段ボールの山々を書き分け美少女が立ち上がる。
「清見先輩っすか?」
「よくごそんじで。生徒会長の清見、晶子です。えっとー井上さんだから一年生かな?」
なんでしってんねんゴゴゴ
「はい、よくご存知で、こっちが花園と高須賀です。先輩、今、お時間よろしいですか?」
チッチッ…
チッチッ…
しばらく沈黙が続いた。
時計の針だけは正確に回る。
「今暇だし、全然かまんよ♪」
今の間はなんだったんだ?!
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