自転車

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岩下さんはその後一分くらい黙りこんだかと思うと、僕のポケットに成績表を押し込んできた。 「結局総合点じゃ平均より少し上くらい。ちょっともったいないんじゃない?」 「どういう事?」 「そのまんまの意味でしょ。理数系で平均くらいとってたら結構上の順位に入れたのに」 「いいよ別に」 僕がそう言うと、岩下さんは何か気に入らなかったのか僕の背中をぽかぽかと叩いてきた。 最近気付いたことだけど、自転車にのって話す時に僕の背中にいろいろとちょっかいを出すのが岩下さんの癖みたいになっている。 「いいよって何よ。高山くん行きたい大学ってないの?」 「大学なんてまだまだ先じゃない?」 「……まぁ、そうね。私も行きたい大学なんて言われても何にも浮かばないけどさ。行きたい大学よりも、今考えるべきは目前に控えた夏休みの計画よね」 「とりあえず僕は運転手の休暇がもらえるんだよね?」 「え?」 「え!?」 「ふふ……冗談よ。私だってそこまで鬼じゃないし」 毎日運転手させてる時点で鬼なんじゃないのかな……。 最近ただパシられてるだけな気がしてきたんだけど、勘違いであることを祈ろう。 「でもさ、一日だけお願いしていい?」 「えぇ……さっそく約束破りじゃない?それ」
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