自転車

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僕はわざとらしく嫌そうな声を出してみた。 もし岩下さんに罪悪感というものがあるなら、少しはこれからのことを考慮してくれるはずだ。 「その……さ、10日ってあいてる?」 「8月の?」 「うん」 「えーっと、ああ、10日って夏祭りの日か。確か空いてたよ。岩下さん部活あるんだね」 「……そうじゃなくて」 岩下さんはその後、少し黙り込んでしまった。心なしか声のボリュームも少し下がっているような気もする。 いつもおしゃべりなだけに、ちょっとだけ何故か僕も焦ってしまう。 「その……夏祭りのある広場まで送ってくれない?」 やっと喋ってくれたと思うと、岩下さんの頼みはなんてないことだった。 「別にいいよ。僕も多分行くだろうしさ」 「そ、それでね?帰りも送ってもらいたいし、わざわざ待ち合わせとかするのも面倒だと思わない?」 「えっ?帰りも?」 「当たり前じゃない」 当たり前じゃないよ。 「まあそう言われると面倒な気もするね」 「でしょ?だからさ……高山君さえよかったら、夏祭り二人で一緒に回らない?」
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