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「ケータイは暗黙の了解よ。今時ケータイ持ってなかったら、こんな田舎町じゃ誰とも連絡取れないもの。その証拠に、持ち物検査なんて無いじゃない?」
「そうだね。じゃあ、頑張って」
「ちょ、ちょっと!」
今の言葉からして、恐らく二人乗りはしないのだろう。そう思った僕が自転車を発進させようとすると、岩下さんは初めて表情を変えて僕の制服を掴んできた。
なんだろうか?
自転車をよこしなさいなんて言われたら、どうしよう。
「分かった、やるわよ。二人乗り」
「えぇ……」
想定外だった。
「なんだか勘違いされてそうだから言っておくけど、今のジョークだからね?二人乗りに罪悪感を感じるほど、真面目ちゃんじゃないわ」
僕の中の優等生疑惑を否定しながら、岩下さんは自分の自転車を通行人の邪魔にならないようなところに移動させると、鍵をかけた。
カゴに入れていた鞄を持って、僕のところに戻ってくる。
「後ろ、いいの?」
「いいよ。二人乗りあんまりしないから、乗り心地は保証できないけど」
「大丈夫よ。高山君、運動神経良いもの」
運動神経、良いもの?
岩下さんの言葉に、僕は少し違和感を覚えた。運動神経良さそうだものなら分かるけど、なんで?
とは言っても、僕が勉強より運動が得意なのは、普段の仲間内での会話や体育の授業を見てればすぐに分かりそうなので、そういう事にしておいた。
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