自転車

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「高山君も、女の子に可愛いなんて言ったりするのね」 「そりゃあ人並みには……あ、今の可愛いは本音だったけど」 「ふーん。高山君って、意外とチャラいのかしら」 「チャラいって……」 可愛くないなんて言ったら、逆に怒ったんじゃない?なんて。 「なに?」 「……何も」 親しくもない仲の女の子に、そこまでは言えない僕だった。 「ギリギリね」 校門をくぐり、駐輪場で自転車に鍵をしている僕の後ろで岩下さんが呟いた。 確かにギリギリだ。あと3分くらいしかない。 「ありがとう、高山君。本当、あそこで高山君が通り掛からなかったら私遅刻してたわ」 「どういたしまして。さ、早くしないと遅れるよ」 「うん」 鍵をつけた僕は、立ち上がるとカゴの中の鞄を取って岩下さんに渡した。 自然と並んで歩き出す。 「私達二人が一緒にギリギリで入ってきたら、皆何て思うかしら?」 「え?……別に何も思わないんじゃない」 「そう。でも私と高山君なんて、中々レアな組み合わせじゃない?」 「かもしれないけど」 特別、何かを思う人なんているのかな。 珍しい、とか。たまたまだろうとかだけだと思うけど。 「あ、高山君。帰りも私専属のタクシー運転手お願いね」 「えっ!?」 「だって、あんな所まで歩くのめんどくさいし。それとも、嫌なの」 「嫌じゃないよ。嫌じゃないけど……帰りだったら、その。皆に見られたりすると思うんだけど」 「いいわ、そのくらい。じゃあ頼んだからね」 何だか良く分からないけれど、岩下さんは気分良さそうにニッコリと笑うと歩き続ける。 一方僕は少し立ち止まり、やっぱり考えれば考えるほど岩下さんが分からなくなって……考えるのを止めた。 「何してるの?遅れるわよ」 「あ、あぁ……うん」
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