自転車

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それから。 チャイムがもうすぐ鳴るにも関わらずダラダラと話しながら歩いていると、結局少しだけ走って教室に駆け込む事になってしまった。 いつもは余裕で(僕はそうでもない)登校してくる二人が、遅刻ギリギリ同時に入ってきた事で少しだけ皆の視線を集めてしまった。 休み時間になるとクラスの男子にその理由を問い詰められたりしたけれど、偶然だと言って無理矢理話題を変えた。 質問攻めにあったのは岩下さんも同じようだったけど、多分僕と同じようにあしらったんだろう。 僕は一向に構わないけど、岩下さんからしたら僕と変な噂が流れるなんて事は嫌だろうし。 さっきはお世辞で言ったような感じになったけど、岩下さんが可愛いというのは本当の事だ。 僕にはもったいないなんて言うと自虐的だが、そのくらい人気があるのは僕でも分かった。 親しみ易いけど、実は高嶺の花みたいな感じかな。質問攻めにもあった事だし、僕なんかと一緒にいるのは避けた方がいいだろう。 ……そのはずなんだけど。 「麗花ずるい」 「なんで一人だけ良い運転手雇ってるの」 「うるさい。別にいいでしょ、自転車壊れたんだから」 「高山君かわいそー。麗花見た目に反して重いでしょ?」 「はは……。」 部活帰りに友達と話しながら駐輪場まで行くと、僕の自転車の前に立っていた岩下さんは一言遅いと文句を言った。 隣で「お前だけは俺の味方だと……」と彼女いない歴が年齢の神田君が呟くと、彼はそそくさと自分の自転車に乗って帰っていった。 待て。 違うぞ。
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