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それから急かされながら自転車の鍵を解き、僕は岩下さんを朝の場所まで送り届ける事になった。
そして校門を出るまでの道のりですら岩下さんは荷台に乗った。
僕はまだ自転車を手で押してるのに。
すると案の定……。
「見せつけてくれるね麗花」
「そんなんじゃないわよ」
「自分の自転車はー?」
「朝言ったじゃない。来る途中でパンクしたんだってば」
朝とは違い、クラスの輪を飛び越えた質問攻めの小さな群れが岩下さんを中心に出来上がった。
勘弁してくれ。
「高山君、麗花の言ってることほんと?」
「まぁ……ね」
「ちょっと、なんで私が言ってる事が信じられないわけ?高山君から乗せてってあげるって言ったんだから」
僕もちょっと待ってもらいたい。あの状況じゃ、どう考えても乗せるしかなかっただろう。
僕に限らず、10人中8人くらいはそうするはずだ。
それを僕がまるで、自主的に岩下さんを乗せようとしたみたいに聞こえる言い方は控えてほしいところだ。
「ま、麗花だから乗せたわけじゃなさそうね。高山君優しいし」
「分かってるわよ。ていうかあんたが高山君の何知ってるわけ?」
「おやぁ?麗花さん、ムキになってきましたなー」
「あー、もう。ほら!幸の無い女子共は散った散った」
からかわれるのは苦手なのか、岩下さんは腕を振って周りの女の子達を遠ざけた。
きゃーとか言いながらも、女の子達は岩下さんに別れの挨拶をしていく。
「疲れたわ」
「だから言ったんだよ。降りたらどう?って」
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