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夕方、講義を終えた二人の大学生が話をしていた。
「なあなあ、いつもここ通ってると、ここから見える路地に『いかにも』って感じのバーがあるだろ、あそこ行ってみないか?」
「いいけど、急にどうした?」
「そこでだ、注文を聞かれたら”いつもの”って頼むんだよ。そしたらどういう反応されるか気にならないか?」
「たぶん、『はぁ?』って言われるのが落ちだぜ。」
「でも、面白そうだろ。」
「暇つぶしにはいいかもな。」
『BARバロン』と書かれた、お店の扉を開ける。
カラコロン!
入ったらそこは想像以上にいい雰囲気のお店だった。
マスターはバッチリとタキシードを着こなし、ひげを生やした初老だった。
「ご注文は?」
想像通りの台詞に、
「いつもの!」
「かしこまりました。」
と、答えた。二人は顔を見合わせて驚いた。予想していた「はぁ?」は無かったのだ。
「なぁなぁ、ジュンちゃん。俺が予想してたのと展開が違うんだけど・・・。」
「なに言ってんだよまっちゃん。そのまま事が進むなら、それはそれで暇つぶしになるだろ。」
「まあ、話のネタにはなるな。」
しばらくすると、マスターが二人分のお酒を用意した。「これ・・なんだろな?・・・」
ジュンちゃんが心配そうに聞く。
「とりあえず飲んでみよ。変なモン出しゃしないよ、お店だし。」
と、言うと早速まっちゃんがガブッと飲む。
「なんてこたぁーない、コークハイだよ。」
それを聞いて、安心してジュンちゃんも飲む。
お互い思ったことは一緒らしく、顔を見合わせて笑った。
しばらくしてマスターが、「ちょっと失礼します。」と言って奥に消えた。
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