プロローグ

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しかし、良く見れば部屋の隅が薄汚れているだけでその部屋自体は綺麗な状態のままである。 影が部屋の中心へと足を進める。 その先には直径4メートルほどの魔方陣が描かれ、中心には布に包まれている、まだ生まれてそれほど経っていないと思われる赤ん坊が寝かされていた。 ―――ピチャンッ‥‥ 「‥‥‥なさい‥。ごめんなさいっ‥」 影の頬に一筋の涙が伝った。 両手で魔方陣に触れると、その瞬間、そこから光の筋が溢れだし始めた。 始め光が出ていたが、暫くすると次には真っ黒な闇に近い深さのオーラが溢れだす。 光と闇のオーラが突如、異様な動きを始め、中心に寝かせられていた赤ん坊の腹へと吸い込まれるかの様に消えていった。 『強制封印"圧"』 暫くの間赤ん坊の体が輝きを放っていたが、影の声に反応し、光が弾かれ部屋の中に消えて無くなっていく。 それと同時に魔方陣も消え、明かりが灯っていたロウソクの炎も全て消え去り、最初の静けさが部屋に漂った。 影はその中赤ん坊に駆け寄り、壊れ物でも扱うかの様にそっと自分の腕の中に抱き締めた。 「‥‥どうか‥‥‥どうか、この子に幸せを」 絞り出した悲痛な声は部屋の闇に吸い込まれ、消える。 それほどか細い声だった。 「――‥その時が来るまで。 ――希望を」 ―――ピチャンッ‥‥ _
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