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それからの私は、今まで誰にも言えなかった心の内を誠さんに話すようになった。
「言いたい事をズバズバ言えるのが強さやとはオレは思わん。
家族の為に愚痴も溢さずに母親と妻の役割やってきた愛ちゃんの方が、ほんまは強いと思うで?
オレ、愛ちゃんの事尊敬するわ」
純粋に嬉しかったし、誠さんのお陰で少し自分に自信が持てた。
今まで辛いながらもやってきた事が報われたような、嫌々までとは言わないけれど、やらされている感があった家事が楽しく思えるまでに変化した。
誠さんの言葉の魔法のお陰だと、私は思った。
付き合い始めて4年が経過し、誠さんからようやくプロポーズされて、私は迷う事なく、その申し出をありがたく受け取った。
この人しかいない!
心からそう思った。
なぜ4年もかかったのかと思うくらい。
それには理由があった。
誠さんは職場に恵まれなかった。
大学を卒業してすぐに就職した会社は、社内のイジメが凄まじく、この会社に将来はないと見切りをつけて退職。
次の会社は業績不振で倒産。
続く会社も倒産。
やっと落ち着いて働ける場所に廻り合い、丸4年が過ぎてようやくプロポーズができたのだった。
そんな誠さんからの第一声は
「待たせてごめん…」
から始まった。
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