第 零 夜

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 これはこれは。  初めまして、お嬢さん。こんな真夜中に私を呼び出したのは、幼いお嬢さんでしたか。 「お嬢さん? そんな風に呼ばれるのイヤよ。アタシは子供じゃないわ、きちんと名前で呼んでちょうだい」  これは、大変失礼致しました。  では改めまして。私は悪魔に仕えるモノ。本来は人間に関わる事などありませんが、今回は特別に願いを聞きましょう。  名はありません。どうぞ貴女の好きな名で、お呼び下さい。 「ふうん、名前がないなんて面倒ね。アタシは緋女(ひめ)よ。アナタは伽(とぎ)って呼ぶわ、それが頼みたい仕事よ」  それならお任せ下さい。私の役目は、悪魔に仕え伽の相手を務める事なのですから。  因みにどのような伽を御所望ですか? 伽にもいろいろございます。 「夜、なかなか眠れないのよ。だから話し相手になってちょうだい。悪魔に仕えてたんだもの、面白い話をたくさん知っているでしょう」  面白い話ですか。  悪魔の“面白い”とは、人間のそれとは違います。それでも宜しいですか? 「……残酷な話は好きよ」  ではお話致しましょう。私の知る、悪魔の箱庭を。
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