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人は皆平等で、誰しもが特別な才能を持っている。
…誰か昔の偉い人がそんなことを言っていたような気がする…
そんなこと、信じてなんかいなかった。
少なからず、その時の俺は。
喜代雅:おい!なにやってんだよ!間に合わなくなるぞ!!
彼は友人の加藤喜代雅。
この高校に入ったとき、たまたま俺が前の席に居座ったことで仲良くなった。
以降3年間、当たり前のように一緒にいる。
運動神経もいいくせに、成績はいつも学年10位以内に入る、正に文武両道な奴だが、一重で目つきが悪く、せっかくのサラサラな髪の毛はいつも乱れている。
明らかにモテるタイプとは言えない。
光太郎:分かってるって!そんなに急かすな!
これは俺…風間光太郎…
いたって普通…
成績が特にいいわけではないが、体育は好きだ。
社会は苦手で、美術に至っては最悪だ…
それでも喜代雅に比べたらまだイイところもある。
今のところ、バレンタインにチョコをもらえなかったことはない。
…一応だが…
喜代雅:急げ!徳川に怒られるぞ!
光太郎:分かってるって!!
俺たちが急いで向かっているのは体育館だ。
高校生活もあと3ヶ月というところで学年全体で課外学習に行くということで、前日説明会が開かれている。
前の授業が体育で、よりにもよって野球をしていたため、体育委員の俺と喜代雅は片付けに時間がかかってしまっていた。
短気な科学教室の徳川からゲンコツを食らわぬよう急いでいるのもそのせいだった。
ようやく体育館に着いたときには、俺と喜代雅を除いた生徒達が、とてもキレイとは言えない列を作って座っていた。
忍び足で自分達のクラスの最後尾へさり気なく座り込むと、後ろから小声で…
-ばかやろう-
徳川だった…
徳川はやけにあっさりと注意を済ますと、俺と喜代雅の分のしおりを手渡し、教師の列へ戻っていった。
しおりの表紙には…
“課外学習にむけて”
とだけ書かれている…。
ペラペラとページをめくるが、あまり確信を突くような記載は見あたらなかった…。
我が校一番の権力者でありながら、威厳の全くない校長から、ありがたいご説明をいただく。
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