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『祈り』
とある市の病院。季節は冬。
夜の月明かりにキラキラと輝きながら舞う雪の中、窓を開け、祈る少女。
暖房がきいているとはいえ、一枚のパジャマ姿では寒さが身にしみる。
しかし、そんな寒さの中気にもせず、手を合わせ、一生懸命に何か呟いている。
『神様…、どうかお母さんを助けて下さい。』
少女は何度も繰り返し祈る。
ガチャッ
『まゆちゃん!また窓開けて!風邪引いたらどうするの!』
懐中電灯片手に看護師さんが部屋に入って来た。
響かない程度の声で怒っている。
『また』
そう、少女はここ数日ずっと祈り続けているのだ。
あの日からずっと。
看護師『早く寝なさい。手術の前に悪くなっちゃったら大変よ?』
まゆ『はーい…』
最後にまた叱られ、窓を閉めながらも返事をする。
看護師がいなくなると、備え付けのタンスの引き出しから写真を取り出した。
まゆ『お母さん…』
写真にはやさしい顔の女性。他には少女と少女の父親らしき人物が写っている。いわゆる普通の家族写真である。
少女は写真を抱きしめ、引き出しに戻すと床につく。
いつの間にか寝入った少女の頬には一筋の涙が伝っていた。
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