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この世界は……そういう世界だ。
紅輝がスッと目を細めた時、何かが動く気配を感じ、視線を向ける。
するとバスタオルで体を覆った少女が歩いて来た。
二人を見ても少女はただ綺麗な瑠璃色の瞳のまばたきを繰り返していた。
飛鳥がニコリと笑い、女の子の前で膝をつく。
「いきなりこんなとこに連れて来てごめんね
色々驚いてるだろうけど、必ずお父さんとお母さんの元に帰してあげるからね」
「お母さん……いない……
私を産んで……いなくなっちゃった……」
飛鳥はハッとし、少し表情を歪め、だが、笑った。
「ごめんね」
優しく少女の頭を撫でるが、少女の顔はやはり人形のように変わらない。
「お父さんは?」
「お父さん……私が出来てよかったって……喜んでた……
一緒に居たけど……お父さん逃げなさいって……」
「逃げなさい?」
紅輝は飛鳥に全て任せていたが、思わず口を挟む。
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