Episode・1 少女

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殺しを依頼しておいて笑うこの男は、子供向けの玩具などを製作している会社の社長でありながら、裏では人身売買や麻薬などの取引もしている。 「……夢か現かしっかり知らしめましょう 依頼、確かに受けました」 紅輝はライターを出し、その場で依頼の手紙を燃やした。 「では」 紅輝は用無しとばかりに背を向け、ドアの方へと歩き出した。 その背を見送ったのち、中年は小さく口を開いた。 「氷結の闇の後継者…… 生意気なところもそっくりだな…… 裏社会でその名を知らぬ者はないとまで言われた氷結の闇が……まさか死ぬとは誰も思わなかっただろう そして現れた後継者は、すでにその名を氷結の闇と同等に知らしめている 表情一つ変えずにやってのける姿は、まさに氷結の闇と瓜二つ…… ククク…… さあ、どれだけ利用できるか……」 男は愉快そうに笑った。 氷結の闇―― その男は殺し屋の中で1、2を争う凄腕の持ち主だった。 その男の笑みを見た者は一切おらず、殺す際にもピクリとも動かないその表情が凍り付いているように見え、夜陰に乗じて殺しをする者だったので、『氷結の闇』と言われた。 また、表で名乗っていた名が雪だったため、血に塗れたその男の姿を見てから紅雪(こうせつ)と呼ぶ者も居た。 そんな彼の後継者が紅輝と呼ばれる『緋の者』なのだ。
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