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プレジデント・ガール
ニューヨーク市のとある一角。
イエローキャブが走り回り、若者が溢れる活発的な町だ。
太陽もさんさんとし始めた10時頃私は、オープンカフェに座って注文したエスプレッソとサンドイッチを嗜む。
読み物は政治や経済を扱う新聞──ではなく、日本からわざわざ取り寄せたコンプティ〇ク。
周りの視線なんて気にせず日本の文化を楽しんでいた。
そこ、人の趣味に突っ込んじゃダメよ?
表紙をじっくり吟味し、中身を4回読み返す。
そんな至福の時間を壊す車両が1台、ビルの交差点を飛び出してカフェの前で停車した。
黒い車両から出てきたのは、黒ずくめの男。
ちらちらこっちを見ており、耳にはシリコンのコイル型イヤホンをしている。
少しするとあらゆる方面から黒い車両が集結し、男が湧き出てきた。
出入口は固められている。
ウェイトレスや客が何事かと騒ぎはじめ、出入口付近に集まりだす。
最後に到着した車両からはリーダー臭のぷんぷんする背広が出て来た。
部下を数人従え、入店してくる。
辿り着いたのは私の目の前。
「……やっと見つけましたよ。わたくしめの封じられた左手でなければ捜し出せないとは……手間を掛けさせてくれます」
うわ厨二臭ぇ。
襟には星型に『UNITED STATES SECRET SERVICE』なんてロゴ。
シークレットサービスですかそうですか。
「……何ですか。私に何か御用で?」
「ワシントンに帰りますよ、"大統領"」
「大統領? 見間違えでは……あっ」
ウィッグをむしとられ、茶髪から金髪へと変化。
伊達眼鏡も取られた。
「さ、帰りましょう。さもなければ副大統領が大統領のプレミアムブルーレイボックスをファーストガンダムにすり替えると」
「副大統領に伝えて。縛り付けた状態でマリアナ海峡に突き落とされるかてめーのガンプラが全て粉砕される、どちらがお望みかと」
ふざけんなよ、私がわざわざ東京の秋葉原まで行って、店頭に8時間は待機した代物だぞ。
しかも既に絶版、それをニュータイプに壊されるだぁ!?
考えられない。
防ぐ為ならレンジャーを副大統領に差し向ける事も厭わないぞ畜生。
──仕方ない、目の前にいるシークレットサービスも仕事なのだ。
エスプレッソを一気に飲み干し、代金をテーブルの上に置く。
周りの驚いた視線を背中に浴びながら、ホワイトハウス直行の専用車両に乗り込んだ。
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