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「うぜぇ。それよりもただ毒吐きに来た訳じゃないでしょ? 用は何」
「ふん。これをざっと見た後に承諾が欲しいだけですわ」
バンッとテーブルに叩きつけられたのは、『環境問題における発電から見た我が国の二酸化炭素排出量及び削減とそのプロセス』を表紙とした紙束。
さっきも言った様に、彼女は内政を得意とする。
だから内政の大体は任せているのだが、こうやってある程度の同意は求めてくるのだ。
口悪くも仕事はきちんとこなす、国の事は考えてる子。
「これね。検討期間は何時もの2週間で良い?」
「……いや、これは1週間以内でお願いしたいですわね。内容で把握してくれる筈ですの」
それだけ言い残して出ていった。
中身を要約すると、主な項目はバージニア州にある原子力発電所『サウスアンナ』の稼働再開、8基の新規建造計画を解凍・順次発注建造開始といったものだ。
正直、これそのまま実行すると私の地位危ないよsk(支持率的に考えて)。
議会も通らないと思うよ。
昨年原発大国であるフランス共和国のロワール=エ=ショール県で原子力発電所『ミルティーユ』がメルトダウン。
第2のチェルノブイリと言われる程の深刻な汚染・被害を被った。
この騒動を受けて、フランスは勿論国内でもじわりじわりと脱原発の意見が出始めたのだ。
今では議会や国民の半数、又はそれ以上が反対するだろう。
別に原発を火力発電にしてもいいんだけども……。
国から民間へお金が流れるし。
ただ、この場合は資源が持たないし輸入が増大する。
我が国はそれなりの数の原発を保有しており、火力に切り換えると恐らく発電が需要に間に合わない。
二酸化炭素も爆発的増加。
ただでさえ京都議定書から私達は離脱しているってのに、そこでわざわざ排出の多い火力発電にするとどんな視線が来る事か。
考えただけで泣けるね。
これらを考慮して検討期間は1週間。
いつもより早いのは、シャロンなりに国民感情を抑える様な策があるからかもしれない。
「……どうするんだ? 前後共に塞がれてるぞ」
「お父さんは非常時の将校なんだから口を出さないの。慎重にならないといけない事くらい分かってる」
受話器を取り、秘書から首席補佐官へと繋がせる。
更にそこから長官を召集する様指示を出した。
折角の執行権だもの、使わなきゃ勿体ないよね。
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