プレジデント・ガール

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その後、オーバルオフィス。 もう一度原発書類の内容を見直す。 私の支持率を取るか、国民にリスクを負わせるか。 …………。 「思い詰めてるな。少し体を動かしてみたらどうだ?」 「……何処かによる」 「勿論、陸軍仕官学校だ」 「やだ」 「アメリカ陸軍特殊部隊群(グリーンベレー)の訓練プログラムでもいいぞ? あれは心身ともにほぐれ、鍛えられる」 「心身ともに壊れるよ私は」 お父さんから何か助言が来ると思えば、筋肉破壊施設に送り込もうとするし。 そういえば小学生ぐらいの時から、陸軍のサバイバルマニュアルを渡された気がする。 私をどうしたかったんだろう……? 父との微妙な空気が流れる中、ドアのノックが響いた。 入室を許可すると茶髪のポニーテール、軍服に身を纏った勲章いっぱいの女性が入った。 「……げっ」 「あ、お母さん」 ミナ・C・ジェファーソン、アメリカ合衆国海兵隊総司令官にして母親。 父は陸軍の指揮課程、つまり少尉から始まったのに対し母は二等兵、前線兵士の下っ端から今の大将まで上り詰めた。 両親の喧嘩は初め起きていたが、今はもう二度と無いだろう。 父如く『1度目は中指、2度目はあばら。次やったら首の骨が折れる』。 「ごめんねエステル、会議に出られなくて……。ところであなた? また娘を鍛えようと……?」 「い、いやいや誤解だ! 気分転換に運動でもなんて話になってだな!」 「お父さん、運動に特殊部隊群の単語はくっつかないよ」 「エステル!? 父さんを売るのkアーーーーーッ!!!」 売ってない、正しく証言しただけ。 やめといたほうが良かったのかな、腕が曲がっちゃいけない方に曲がっている。 骨折れずにあの態勢は中国雑技団しか出来ないと思う。 取り敢えず廊下にいたシークレットサービスを捕まえ、担架で搬送させた。 「……ふぅ、ちょっとは鍛えたみたいだけどまだまだね。で、内容はこれ?」 いつの間にか書類を手に持っている。 頷くと、スラスラと文を目で追っているようだった。 「ふーん……原発、ねぇ。エネルギーは幾らあっても困りはしないんじゃない?」 「でも……反対されたら……」 「あくまで助言よ? 賛成する者には反対する者も絶対いる。支持率なんてデータばっかり見ちゃダメよ。いや気にしなきゃいけないけども、とにかく。何事もリスク無しにはいけないわよ?」
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