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それは昨日の夜のこと―――――
「うぅ……まだ言えないよぅ…。」
園原家の隣の家、前崎家の長女である前崎楓は携帯を見ながらブツブツと何かを言っている。
メールをしている相手はもちろん凍麻。
実際楓の部屋と凍麻の部屋はお互いの部屋の窓から出入りをすることができるのだが楓は凍麻の部屋にはあまり行こうとしない。
いや、行きたくても恥ずかしくていけないのだ。
「『そうだな。』だけかぁ……。」
メールの返信が来たので内容を見るとそれはたった一言『そうだな。』だった。
「言うなら今しかないよね……。」
何かを言う決心をした楓。
ゆっくりと携帯のボタンをポチポチと押していく。
「そ、送信……!」
一人で真っ赤になりながら凍麻にメールを送る。
その内容とは
『明日一緒に学校に行こう。』
たったこれだけ。
楓が恥ずかしさに身悶えていると
会いたくて会いたくて震える♪
某有名人歌手の歌が流れる。
即座に携帯を取った楓は恐る恐るメールを見る。
『いいぜ。じゃ、もう寝るからまた明日な。』
凍麻から楓が最も望んでいたメールが返ってきた。
「よしっ!!」
楓は小さくガッツポーズをすると明日寝坊しないように、とすぐに寝た。
――――――――――――――――
もちろん凍麻はそんなことがあったとも知らず、いつも通り寝坊してしまい、急ぐあまり楓との約束を忘れていたのだった。
「わ、忘れてた……。だから謝っても許してくれなかったんだ。」
「わかったらお風呂に入って汗流して、謝っておいで。」
途端に優しい笑顔になった涼子に促され、凍麻は急いで風呂へと向かうのだった。
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