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‥山の中腹だった。
地蔵峠というらしい。
さいきん改修されたとおぼしい道路は、右に左に本来あった道筋の蛇行路をのこしていて、あたしが運転してきたアリストは、その枝道に停めていた。
さっき。車内でとうとつに、別れ話を決めたばかりだった。
眼下には川筋がみえ、それもあざやかにいろをかえていく。
ふたり並んで、それを見ていた。
「ああ、こどもたちみたいだ。」
彼がそういい、あたしも「そうね、そうみえるわ」とつぶやいた。
雲があがっていく。
夕まぐれの空は暗く、低い層雲はいやがうえにも朱くそまり‥
ここからみえる全周の地平線から、小さなかたまりの群れなす雲が、
そこから立ちのぼるように‥天にのぼるようにみえていた。
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