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翼君が置いた手の上に、田中さんが手をのせる。
「あっ、ぼ、僕も頑張ります……」
それを見た金田さんは恐る恐る、田中さんの手の甲に自分の手を重ねた。
すると田中さんが私に視線を向ける。
「ほら、八城さん。早く一番上に手をのせるんだ!」
「あっ、はい」
私が手をのせるやいなや、いきなり田中さんが、
「手の塊、いただき!」
そう叫び、あろう事か私達が手をのせた部分にかぶりつこうとしてきた。
「きゃあっ!?」
「ひっ!?」
「ゲッ!」
「うわっ」
私達は一斉に手を引っ込めた。
それを見た田中さんは満足そうにガハガハと笑う。
「はっはっはっ! 素晴らしい。それだけの素早さがあればやっていけるな。抜き打ち田中テスト、合格だ」
「は? おっさん、何が言いたいのさ。キモいし」
「世の中はなにが起きるか分からない。つまり油断大敵と言うことだ」
い、言いたいことはなんとなく分かるけど……団結していた雰囲気が見事にぶち壊しだ。
田中さん……やっぱりあなたはなんて人なんだろうか。
周囲で見ている皆も苦笑いをしていた。
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