出会い

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さっきのアリスエイドの発言のせいで周りの視線が集まる。 「ちょ、アリスエイド、離れてくれ。皆さんが見てるから」 「構わん」 「構って下さい」 説得すること約5分。3つ買ってあげることを約束した瞬間に離してくれた。 僕が注文を頼んだ時の店員さんの視線が気まずそうに笑う。 アリスエイドは3つ買って貰えるのが嬉しいのか笑顔。 僕?正直、目から涙が零れないように頑張っています。 店から出て今度は寄り道をせずに家に帰った。 家に着いて僕がドアを開けたと同時にアリスエイドは自分が選んだケーキをお皿に乗せていた。 しかし僕が「手洗えよ」と言ったので渋々洗いに行った。 その後、僕もお皿にケーキを乗せた。 いただきますと言ってアリスエイドがショートケーキを一口食べるのを見た。 「美味しいか?」 「ああ、とても美味だ。こんな美味な物初めて食した」 「そうか、それは良かった」 するとアリスエイドが僕のケーキを見る。 僕が買ったケーキはガトーショコラ。 アリスエイドが買ったのはショートケーキ、モンブラン、イチゴのムースである。 「のう?ご主人。我のケーキを食べてみたいと思わんか?」 「いや、別に・・・」 「思わんか?」 アリスエイドの目が光る。 僕はその圧力に負け、一口貰う事になった。 「ほれ、ご主人。あーん」 「えっ!?アリスエイド、そんなのどこで覚えたの?」 「うむ、さっきの店でやっておったのでな」 フォークが段々近づいてくる。 僕は、ついこんな単語が頭を過った。 間接キス しかしアリスエイドは吸血鬼。そんな言葉を知るはずがないと思った矢先。 「あっ、間接キスになってしまったな」 「ゴホッ!」 「なんだ?どうしたんだご主人?」 「なんでそんな言葉を?」 「その箱から得た」 その箱とはテレビのことだった。 「ほれ、ご主人。我のケーキを与えたのだ。見返りをよこせ」 そう言ってアリスエイドは目を閉じ口を開けて待っている。 僕はケーキをフォークですくい、アリスエイドの口に運んだ。
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