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桜の花びらが舞う季節。
心踊るその季節は、たくさんのものを運んでくる。
爽やかな風、香り、暖かな陽射し、新しい気持ち…そして始まりの日々を――。
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「ここが兄貴の通う学校…」
ポツリと呟いた少年は、感動した様に校門の前に佇んでいた。
自分と同じブレザーの制服に身を包んだ生徒が行き交うのを、思わず落ち着きなく見渡してしまう。
「なんか…緊張する…」
緊張を解す様にふぅ…と息を吐いてみるが、やはり胸の高鳴りは治まらない。
私立デコ若学園高等部。
品行方正、成績良しのエリート学校。
小中高とエスカレーター式の学校で、中等部・高等部の外部入学者は劇的に少ない。
そんなエリート学校に滑り込みの外部入学を果たしたのが、現在深呼吸をしている相澤由紀、15歳であった。
「やっと…」
彼はもともと公立中学に通っており、勉強もあまり得意と言える方ではなかった。
その彼が猛勉強してこの学園を志望した理由……
「やっと、兄貴と一緒の学校に通えるんだ…」
何て事はない。大好きな兄を追って…の事であった。
ちなみに由紀の兄は初等部からこの学園に通っている。
実に9年後しの願いであった。
もちろん初等部・中等部の入学試験も受けたのだが、見事に惨敗。
由紀は愕然とし、死に物狂いで高等部の入学試験に挑んだ結果、今日の入学式に至る。
「補欠合格だって、合格は合格!」
大声では言えないが、本当にギリギリだったのだ。
由紀はきゅっと右の拳を握り、再び息を吐く。
「入学式の会場に行かないと…」
ずっと校門の前に突っ立っているわけにはいかない。
由紀は事前に兄から教えて貰った講堂への道筋を思い出し、歩きだそうとした瞬間。
「っ!」
「わっ!!」
背中に誰かがぶつかった。
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