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「ごめん…!俺、考え事してて…」
由紀はすぐさま後ろを振り返り、ぶつかった生徒に謝罪する。
ずっと突っ立っていた自分に非があるのは明白だった。
「いや…。俺も前方不注意だったから」
振り返って、自分よりも少し高い位置にある生徒の顔を見上げて、由紀は目を丸くする。
(び、美人さんだ…!)
クセのある長い黒髪に、優しい瞳。白い肌に、透き通る声。
見知らぬ他人なのに、勝手に頬が熱くなる。
本物の美人というのは、こんな力を秘めているのか…なんて思いながら固まってしまった由紀を見て、美人の生徒が心配そうに声をかける。
「君、大丈夫?」
「え!?あ、うん…!大丈夫だぜ!!」
思わず声がひっくり返ってしまった。
美人さんも全く納得していない顔をしている。
由紀は恥ずかしさのあまり、更に顔を赤くして
「ホントに大丈夫だから、えっと…ごめん…!!」
くるりと踵を返すと脱兎の如くその場を後にした。
残された美人の生徒は、突然走り出した由紀の後ろ姿を呆気に取られた様子で暫し見つめ、クスリと笑みを溢した。
「面白い子…」
その笑みを見れば、由紀はもっと慌てていただろう。それぐらい綺麗な微笑を浮かべていた。
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