1 始まりの日々

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「ごめん…!俺、考え事してて…」 由紀はすぐさま後ろを振り返り、ぶつかった生徒に謝罪する。 ずっと突っ立っていた自分に非があるのは明白だった。 「いや…。俺も前方不注意だったから」 振り返って、自分よりも少し高い位置にある生徒の顔を見上げて、由紀は目を丸くする。 (び、美人さんだ…!) クセのある長い黒髪に、優しい瞳。白い肌に、透き通る声。 見知らぬ他人なのに、勝手に頬が熱くなる。 本物の美人というのは、こんな力を秘めているのか…なんて思いながら固まってしまった由紀を見て、美人の生徒が心配そうに声をかける。 「君、大丈夫?」 「え!?あ、うん…!大丈夫だぜ!!」 思わず声がひっくり返ってしまった。 美人さんも全く納得していない顔をしている。 由紀は恥ずかしさのあまり、更に顔を赤くして 「ホントに大丈夫だから、えっと…ごめん…!!」 くるりと踵を返すと脱兎の如くその場を後にした。 残された美人の生徒は、突然走り出した由紀の後ろ姿を呆気に取られた様子で暫し見つめ、クスリと笑みを溢した。 「面白い子…」 その笑みを見れば、由紀はもっと慌てていただろう。それぐらい綺麗な微笑を浮かべていた。
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