第1章

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芳 翠煉-ホウ スイレン-は最悪な寝起きを迎えた。こういう日は決まって右の二の腕に刻まれた奴隷印が、ジリジリと痛む。 彼女は商家である芳家の娘だが、今は実家がある珱州-ヨウシュウ-を離れ、蓬州-ホウシュウ-に来ている。 一人旅は、嫌な記憶ばかり思い出させる。 それもこれも、馬鹿な官吏共のせいだと翠煉は思い、無責任な怒りを意味もなく机にぶつける。 去年までは内戦が起こっていた。原因は誰が皇帝の位に即くか。 数十年に及ぶ後継者問題は、二つの陣営にわかれて争っていた。 軍事的に有能な第一皇子側と政治的に有能な第四皇子側の争いである。
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