卒業式

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      * 「なぁーミラ。無視するなよ」 僕が鏡をいじりながら通学路を歩いていると、隣を歩いていた見慣れたツンツン頭が未来の顔を覗き込む。 「朝から不細工な顔をみて不機嫌なんだ」 「誰のことだ?」 「自覚無いのか?お前の事だツンツン」 「何だか涙が出ちゃう、あっ、目にゴミが入ってただけだ」 ツンツンは立ち止まって目を擦るが未来は無視して歩き出す。 今日は卒業式だ。 この通学路もこれでお仕舞いかと思うと、和み惜しい気がする。 季節は春に近づいているはずだが、まだ木に雪が積もっていて息を吐くと白く蒸気のような息がでる。 “お別れ” 今日はその言葉が頭から離れない。 今まで付き合ってきた友達が一気にいなくなるのは、ナルシストの僕でも寂しいものは寂しい。 そう思うと目頭が熱くなってくる。 「ふう、取れた取れた。ん?お前もゴミが入ったのか?」 「…だいなしだよお前のせいで!」 「なに怒ってんだよ?まぁそれはそうとどうなんだ?」 「なにが?」 「だーかーらー、終業式終ったらカラオケに行くかと聞いている。あとその手やめろ」 カラオケ?あぁ打ち上げでもするのか… 雰囲気ぶち壊しでムカついたので、頭をグー殴るために掲げていた手を引っ込める。 確か財布の中も大丈夫だった気がするな。 と言うことで 「了解した」と返した。
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