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「渡さんに、お子さんは?」
「今年二十になる道楽息子がね。もしあいつが、と思うと、清太郎の心痛が自分のことのように感じるよ」
渡は落ち込んだ表情で応える。
「今朝、朋香ちゃんが亡くなったという連絡を聞いた時には、息子もかなりショックを受けてね」
そう言って渡は大きなため息を吐く。
「いや、失礼。急に呼び止めてしまって悪かったね。昨日から君が来ていると聞いて気になっていた物だから」
そう言うと、球太に別れの言葉を告げ、渡は歩き出す。その後ろ姿を見送りながら、球太は、彼がどうして自分のことを気にするのかと、首を傾げた。
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