丸印

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 球太は心配そうにその様子を眺めていたが、掛ける言葉も見つからず、仕方なく手帳に目を戻した。  リストの中で丸印の付けられているのは、渡啓介、立浪肇、そして大島大樹だった。  その三つの名前は球太にも聞き覚えの有る物だった。大樹はもちろんのこと、立浪肇はパーティーの席上で言葉を交わし、渡啓介はつい先ほど、彼の父親と廊下で会話をし、彼の話題も出たのだから。  とはいえ、球太は大樹以外の二人のことは詳しくは無かった。とすると、静香に聞くのが一番だろう。だからといって、気落ちをしている静香にこれ以上の心労を掛けてもいいのだろうか、と逡巡する。そして、それ以上何も進展することが無いまま、その日は終わっていった。
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