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どんなに空が晴れ渡っていても、大地を見ればそれは荒廃している。
話に聞いた事しか無い緑に、空を舞う鳥の歌声。
それらが戻って来る可能性など、きっとほとんど無いのだろう。
けれど、それでも希望を持てるのには理由がある。
湧碕は上着の下から、いつも大切に持ち歩いている物を取り出した。
それは手のひら程の大きさがある、漆黒の羽。
話に聞いて湧碕が想像していたような、さえずる小鳥の羽とは少し違ったけれど。
これがある筈の無い、この地で見付かったのは。
希望なのだと、湧碕は確信している。
この羽が舞い降りたのは数年前。
初めて冷たく鋭い眼差しに出会った、あの時だった。
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