9人が本棚に入れています
本棚に追加
この大地の上から、昔の鳥の姿が消えたのはいつだろう。
かつては空を自由に舞っていたという鳥は、もういない。
美しくさえずる声も、今は聞こえない。
それでも空を見上げる度、人は憧れるのだろう。
地上から離れ、何処までも遠くへ飛んで行きたいと。
しかし、もしも実際に翼を手に入れたら。
大地に焦がれたりはしないだろうか。
休み場を求め、惑ったりはしないだろうか。
終わらない嵐を憂いたりはしないだろうか。
何も迷わない存在など、きっと何処にもいない。
だから人は空に惹かれながらも、この大地の上で生きて行く。
例え状況がどんなに絶望的であっても。
ほんの小さな。
ささやかな希望だけで、人は強くなれるのだから。
最初のコメントを投稿しよう!