希望の羽

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この大地の上から、昔の鳥の姿が消えたのはいつだろう。 かつては空を自由に舞っていたという鳥は、もういない。 美しくさえずる声も、今は聞こえない。 それでも空を見上げる度、人は憧れるのだろう。 地上から離れ、何処までも遠くへ飛んで行きたいと。 しかし、もしも実際に翼を手に入れたら。 大地に焦がれたりはしないだろうか。 休み場を求め、惑ったりはしないだろうか。 終わらない嵐を憂いたりはしないだろうか。 何も迷わない存在など、きっと何処にもいない。 だから人は空に惹かれながらも、この大地の上で生きて行く。 例え状況がどんなに絶望的であっても。 ほんの小さな。 ささやかな希望だけで、人は強くなれるのだから。
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