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突如として聞こえる、女性の声。
辺りを見回すが、不思議な事に人はおろか車の一台も通っていない。
『ちょっと、聞いているの?』
声の発信源は、赤タイルの壁に取り付けられていたインターホンだった。
「いや、あの。別に何か用事がある訳では無くてですね。たまたまこの建物が目に止まったと言いますか――」
『いいから、入りなさい?』
「喜んで失礼します」
インターホン越しで伝う彼女の言葉の裏に、何かとてつもない力を感じ取った俺は、素直に従ってしまった。
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