三百円の夢

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 結局見兼ねた妹が玄関まで行って鍵をあけた。  因みにあれから30分後の出来事である。  しかも父は鍵をちゃんと携帯していたらしい。  なら鍵を使って普通に入ってこいよと思う。  だが父は自分の秘めた潜在能力を疑わず、ずっと玄関の前でハンドパワーを送り続けていたらしい。  この調子でいけば、あと200年後位には潜在能力が開花するかもしれない。  まあ200年かけた結果、習得した力がピッキングというのはとてつもなく虚しいが。 「それで夢を買ったってどーゆーこと?」  テレビを見ながら妹が父に尋ねる。  テレビの中では人気絶頂のアイドルグループ、『アラツ』が歌を披露している。 「おおそうだった! 実は今日道端で五百円玉を拾ってな。交番に届けようかとも思ったんだが、金は天下の回りものと言うし、きっと父さんがこのお金を使うことで、いずれ落とし主のもとに行き着くだろうと思って、拝借したんだ」  つまり猫ババである。 「その後色々あって百万円ほど手に入れたんだが、夢を買った話とは関係ないからその説明は置いておこう」 「待てい! 何がどうなったら百万円!? 五百円拾った話より先にそっち話せよ!」 「そんなに大きな声をだして、はしたないですよつりとさん」  おっと今はそれどころじゃないんではなかろうか。  どうしてこの見た目10代後半の四十路(よそじ)半ばの母親は冷静なんだろうか?  妹に関してはてんで無関心である。  いや、まだ小学校を卒業して3年しか経ってない妹には難しい話だったか。
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