30人が本棚に入れています
本棚に追加
最初は布の隙間から見るだけだったが、次第に自然と身体が中へと入って行く。
「…何、ここ…」
「あ、やっと入って来た。逃げたらどうしようかと思っちゃった。」
彼の言葉は私を素通りする。
布の奥にあったのは、それはもう想像を絶するものだった。
ビルに挟まれ、空に延びる広い空間。後ろもビル。両端もビル。
私はやっとこの大きな布の役割を理解した。
前からの死角を作る為なのだ。
ゆっくりと辺りを見回す。一番手前には煉瓦が二、三段積まれコの字に壁を作り、その中には火が炊かれている。形はキャンプでよく使用するようなやつだ。
左側には木箱が無造作に積まれ、男の子が何かに夢中になっていた。右側は何もなくあるのは壁だけだった。それらの中心、その奥に地面より少し高くしてあるコンクリートと、それに覆いかぶさるように立つ差ほど大きくないテント。
最初のコメントを投稿しよう!