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「どうしたの?もっと中においでよ」 私をここまで連れて来た少年はあどけない笑顔を向けて手招きをした。 それに従い、私はテントの前、つまり全身黒に包まれた男の前に立たされた。 片方ずつゆっくり足を折り曲げ、正座をする。 緊張してぎこちない動きになってしまう。そんな自分の行動が恥ずかしくて膝に置いた手をぎゅっと握りしめていた。 暫く沈黙が続き、居心地が悪くなり隣りを見ると、先ほどまでいた少年の姿がなくなっていた。 慌てて辺りを見回すと、少年は木箱の上に寝転がっていた男の子を起こしていた。 私は安堵の息をつくと、ちらっと前に視線を向ける。 彼はちょうど煙草に火を付けているところだった。 彼の顔の周りを赤いライターの光りが暖かく包む。 この人もよく見るとすごくかっこいい。 少し目にかかる前髪。耳にはたくさんのピアス。指にはめられたごつい指輪。首にかかる十字架のネックレス。その下に服の隙間から見えるきれいな鎖骨。がっしりとした肩。 彼の全てが私を虜にさせた。 その彼が急にこちらに視線を向ける。 私の心臓は大きく脈打つ。まるで全身が心臓になったのではないかと錯覚するくらい脈が高鳴り、頭を響かせる。 彼はたくさん指輪をはめた手を自分の口にあてる。 「口…開いてるよ」
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