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――はあ、はあ、 遠くに聞こえるサイレンの音が響く、深い闇の夜。 ビルとビルの間に挟まれた暗い脇道に入り、壁に手をついて息を整える。 ――はあ、はあ、はあ… 壁に背を預けて座り込む。 ――はあ、はあ…ぁ…ゃ…ッどう…しよう… 私は所々朱に染まる腕で身体を必死に抱き、震えを止めようとする。 ガクガクガクガクッ 私は膝に頭を埋める。 ――…ッ…人…殺しちゃった…ど、どうしようッ…殺すつもりなんてなかったのに… 涙が今の気持ちと裏腹に温かく頬を伝う中、つい先ほど起こったことを思い出す度に身体の震えは一層激しくなる。 立つこともままならない。 怖くなって咄嗟にあの場から逃げてしまった。 あのまま残っていればよかったのだろうか。…今となってはもうわからない。 頭が正常に機能しなくなっていた。 あの時は、ただ、その場にいたくないという思いだけが頭の中を掛け巡っていた。 人を刺すあの感覚… あの感覚が身体に染み付いて離れない。私は自分の手を広げて見つめる。 この手で… 私は手の平に爪が食い込む程強く握りしめた。痛さなど感じない。 今あるのは ――恐怖 それだけだ。
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