6/18
前へ
/18ページ
次へ
「…君…」 その人影が私の肩に手を置いた。 「っひッ…」 私はその手を振り払ってしまった。 しまった、と思ったときにはもう遅かった。残酷に殺された自分の姿が一気に頭を過ぎる。 殺される、そう思ったその時―― 「…大丈夫、何もしないから、落ち着いて」 そう私を宥めるように言って、私の前に屈み込み顔を覗き見る。 にゃー 猫も私に寄ってきて身体を擦り付ける。 私はゆっくり顔を上げた。 そこにいたのはまだあどけなさが残る笑顔を見せる少年だった。 街の明かりに照らされる白い肌。その白さに比例するように被さる漆黒の髪。 小顔で目も大きく、そして澄んでいた。鼻筋が通ったバランスの取れた良い顔立ち。唇は薄く、両端を上げて私に優しい笑顔を向けていた。15、6才ぐらいだろうか 「…どう、落ち着いた」 私は少年の問い掛けに我に返る。つい、少年の顔に見取れてしまった。そして安堵する。 ――よかった… 「あ…はいっ大…丈夫です」 私は無意識のうちにさっき猫に向けた笑顔を彼に向けてしまった。彼は少し驚いた顔をしたが、すぐにまた優しい笑顔に戻って言った。 「そんなことより、こんなところにいたら危ないよ」
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

30人が本棚に入れています
本棚に追加