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あれから何度太陽が沈んで彼を待ちわびたでしょうか。私の体はもはや感覚という感覚はなく、ただ彼が巣にいるかどうか、それがわかるだけになっていました。 彼に撫でられていることを感じられなくなった時には、ひどく悲しんだものです。彼は私がそれら全てを失いつつあることを知ると、お喋りになりました。今日見た景色や、今見える風景、私を撫でている足が何本か、そんなことを話すようになりました。 それから彼は巣を離れることが少なくなりました。1日中巣にいて私に話し掛けているか、ただ黙って私を撫でているようです。 私が今日も巣は綺麗かと聞くと 「朽ちていくお前ほど綺麗ではないな」 と答えます。朽ちていく美しさとは何かと聞くと、終わりを知る安堵と恐怖だといいます。私にはよくわかりません。 ただ、私が彼の巣に囚われたことが私の終焉に向けての始まりだったことに幸福を覚えることは、確かではありました。
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