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「相も変わらず、綺麗な所だ」
私は日が暮れるまで、蜘蛛が戻ってくるまで、飽きることなく自分が横たわる彼の巣を眺めておりました。
蜘蛛はやはり私の顔の前まで来て顔を撫でました。なにを考えているのか、どうしようというのか、さっぱり見当はつきません。ただ朝より少し私を撫でる足が力強く感じられるのでした。
「昼の間は暇だっただろう?」
いいえ、この巣を眺めていると飽きることはありませんでしたよ。
私が答えると、彼の足がすっと私から離れ足元の糸を触りました。
「お前の自由を奪った場所だ」
自由を欲していればここは憎むべき場所ですが、そうでなければとても美しい場所に思えてなりません。
「無抵抗は初めてだ」
彼がなんだか嬉しそうに見えました。表情は相変わらずでしたが、再び私を撫でだした彼の足が少し乱暴だったのです。
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