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「泣くと渇くぞ」
蜘蛛でした。目の前いっぱいに蜘蛛の顔でした。
沢山ある足の3本で私の頭を支え、もう1本で私の流す涙を拭っていました。時折、涙をすくい舐めているようでした。
私は泣いていた?
「それはそれは静かに、綺麗に」
急に気恥ずかしくなりました。蜘蛛が目を反らす私を構わず撫で続けます。ひどくゆっくりと、感触を味わうように。私を食べるように。
だからでしょうか。いつまでも、蜘蛛の顔が見られません。どんな表情をしているのか気になるのに、私は彼のしたの綺麗な糸を見ることしかできませんでした。
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