あんたと、俺ら

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俺らを釘つけにする 美しい模様をまるで 見せびらかすかの様に ひらひらと羽ばたく蝶 時に羽根を休めるために ふ、っと近付いてきて その姿を見せてくれるけど いざ触れようとすれば 宙に浮く羽毛の様に 手の間をすり抜けてゆく …そう、あんたは まるで蝶みたいだ。 俺らの心にするりと 入り込んでくるくせに 自らには消して触れさせない あんたの側に行くことを 望むのにあんたはそれを 許してはくれない。 あんたにとって。 人との関わりなんて、 必要のないものだから。 もしそれが自分の自由を 妨げるものなら…… あんたはなんの躊躇もなく たった一人で生きていく 道を選ぶだろう。 それが簡単にできて しまうのが…あんた。 「あんたには 怖いものがないわけ?」 なんであのとき、 あんなにイライラしていたのか 今でもわからない。 ただ、なぜだかすごく 怖かったのを覚えてる 「あるよ」 ふわり、ってあんまりに 柔らかく笑うもんだから どくん、て心臓が大きく高鳴った 「なに?」 「ひとり」 あんたはひとりでも 生きていける。 自分の自由を失うくらい なら自分の持っているものを あっけないくらいに あっさりと切り離す。 それなのに、 あんたは俺らに ほんの少しの可能性を ちらつかせてくる それがわざとなら あんたは相当な悪魔だ。 「嘘だ。 群れるの嫌いじゃん」 「嘘じゃねーよ」 必要な人だけ、 近くにいて欲しいの それはなんて、 怖い言葉なんだろう。 あんたに必要ないと 思われたら、 あんたの中に居場所なんて 与えられないんだね 愛想笑いだけを うかべられてあんたとの 距離はどんどん開かれてゆく ねえ、あんたの中で 俺はどこにいるの?  
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