会いたい。

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このバイトを始めた ばかりのころ、 客が入ってくる音楽が あまりに鳴り響くから。 家に帰ってもその音楽が 頭の中で鳴り止まなくて 夜も眠れなかった。 そんなだった音にも 慣れてミスばかりだった 作業もこなせるようになり 作り笑顔もなんの曇りも なく出来るようになった 「いらっしゃいませー」 こんな大人になりたくない 小さいころにそう思って いた姿にどんどんなって いってる気がする けど、子供頃に 描いていた姿なんて 綺麗すぎて、 生きてなんかいけない。 「よ、亮くん」 「あ…慧くん…。」 手にたくさんのパンやら お酒やらを抱えふわ、と 笑う今の俺の唯一親友 慧くん 「どうしたの?」 「バイト何時まで?」 「22時までだけど…」 「…ちっ、 あと2時間かよ」 「…慧くん?」 「早く会計してよ」 「あ、あ…すみません」 商品をレジに打ち込む 途中で財布からぴらっ、 と簡単に福沢諭吉さん を出すのを見て 少しきゅん、と してしまった。 「…なんだよ?」 「あ、いや。 かっこいいなあ、と…」 「そーかあ?」 あ、あとタバコ。 綺麗な指で俺の後ろを 指差して財布をしまった慧くん 「あれ、お釣りは?」 タバコをとりレジに 通し他のものを袋につめてく これだけ買ったからって さすがに福沢さんぴった にはならない。 当然お釣りは出てくるわけで。 「え?あ、ああ…」 どうやら忘れていた らしい慧くんはもう一度 ポケットから財布を出した 「どうしたの?」 「んや。」 「そう」 つめた袋を渡し、 福沢さんをレジに入れて お釣りを返すと 慧くんはまた笑った 「待ってっから。」 「え?」 「バイト終わったら、 すぐ出てこいよ?」 「え、ちょ…慧くん?!」 扉が開いたことを 知らせる明るい音楽が鳴り 慧くんは外へ出ていった。 バイト中だった俺は 外に出ることはできず ただため息をついた。  
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