会いたい。

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―――… バイトが終わって、 慧くんが待ってるから 急いで着替えて外に出た 外に出た瞬間、 自分の身を包んだ冷たい 空気に体が震え 早く帰ろう、と 前を向いたら視界の端に 変なものが見えた気がした 気にせずそのまま 歩き出そうとして、 でもちょっと気になる から目線だけをやったら コンビニのゴミ箱の前で 膝抱えて丸まってる人がいて。 どっかで見たことあるな とか思いながらも 間違ったらいやだから スルーする気でまた 一歩踏み出した。 でも眠そうにむく、と 顔を上げたその人を見て 俺は止まった。 「え…、」 「…よお。」 「さ…慧くん?!」 なんでここに? その問いかけは彼に とっていいものでは なかったらしい 眉をぴくっ、と動かして 急に立ち上がった。 「待ってるっつたろ」 「いや、そーだけど」 「なんだよ。 俺がいたらだめなのかよ」 「違うよ。俺はてっきり 自分の家で待ってると 思ってたから……」 こんな寒い季節の中、 2時間も外で待ってる なんて。 考えつかなかった そう言っても慧くんの 機嫌はあまり変わらなくて 「俺、待ってるって 言ったじゃねーか」 「うん」 「んなビックリ しなくったって」 「うん、そうだね。」 ごめんね? 慧くんに少しだけ 近づいて言うと 彼は少しだけ、 ほんの少しだけ 悲しそうな顔をして 下を向いた 「…お待たせ。」 「…おう」 慧くんは歩き出して 俺も後を追うように 一歩遅れて歩き出した  
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